陸上競技にはいくつもの種目があります。現在のオリンピック種目になっている数でいうと24種目もあるんですね。
そんな陸上競技の種目に唯一、競技のタイミングを「最後に行う」と決められている種目があります。これはルールによってそう定められているというわけではないんです。
盛り上がるから最後に行うのです。慣習的にこうなっていて、高校生の地域予選から、オリンピックや世界陸上までこれは変わりません。
それこそが、1600mリレー、通称マイルリレーです。
知らない人のために解説しておくと、マイルリレーは4人がそれぞれ400m(トラック1周)を走りバトンをつなぐ競技です。走行距離が約1マイル(=1609m)であることから「マイル」と呼ばれます。
何故、マイルがおもしろいのか?
何故、マイルが盛り上がるのか。いくつも理由はありますが、個人的に大きいと感じるのは、非常にハードな種目であるから、というものです
陸上競技は多くの種目があるため、練習内容も専門種目によって当然異なります。しかし、「400mを走る」というのは短距離も長距離も、なんだったら縁遠い投擲選手ですら行ったことがあろう、数少ない共通因数的な距離なのです。
それゆえに、そのハードさは陸上選手なら全員が理解できます。それゆえに、走る選手には敬意と称賛が向けられ応援にも熱が入ります。
前述のマイルリレーは最後に行う、というのは「疲れるからそれより後ろに競技を置けない」という理由もある。(日程の短いインターハイは競技の日程の真ん中で予選が行われる、走る高校生には尊敬しかないです)
そんなマイルの個人的にアツいレースを紹介したい。
2018年日本インカレ女子 日体vs立命館
これはとにかく1回みてほしい系の映像です。理屈抜きですごい展開です。
このレースを「人生で見た一番アツいマイル」と評価する人も少なくないと思います。
YouTubeでも3000万再生されています。陸上の動画で一番多いのではないのでしょうか…
日体大のアンカー、広沢真愛選手のパフォーマンスがとてつもないです。この試合、自分は現地で観戦していたのですが、ゴール後の電光掲示板が表示された瞬間の会場の盛り上がりがすごかったことを覚えています。
2020年日本インカレ男子 早稲田vs日大
同じくインカレの男子のレースです。
これはとにかくラストの競り合いがとてつもなく面白いです。「叩くような」とはまさにこのことです。
サムネに移っているのは400m前年覇者で翌年の東京オリンピックの代表になる伊藤利来也選手(早稲田大学)と、この年の400mHで優勝している山本竜大選手(日本大学)です。
早稲田、日大ともにこの2人以外の選手もかなり充実していて非常にレベルの高いレースでした。
どちらが勝ったのかは、ぜひ動画を見てみてください。
2022年オレゴン世界陸上男子 日本vs世界
これは説明不要でしょうか。マイルリレー日本代表チームには3分の壁がありました。
3分(180秒)というのは、1人当たり単純に考えると45秒ちょうどです。
リレーは助走があるため、単純な比較はできませんが、45″00というタイムは個人で世界陸上やオリンピックの標準記録を突破できる数字です。おそらく45″00より標準が速かったのは2021年東京オリンピックのみかと思われます。(44″90)
2022年当時は45″00を切った日本人は高野進さん(44″78)のみでしたから、これは非常に高いレベルの数値なのです。そんなレベルの選手を4人集めてようやく3分の壁と勝負することができるのです。
世界大会で決勝進出、さらにそこで勝負をするとなると3分の壁は当然のように破っていかなくてはいけないタイムでした。
それをようやく打ち破ったのがこのレースです。
アジア記録は2023年のブダペスト世界陸上でインドに塗り替えられてしまったので、今後も日本チームにそれを上回る期待をしています。そして現在の日本チームはそれを達成できる力がすでにあると思っています。
2014年 日本インカレ男子 慶應vs早稲田
こちらは以前、山縣亮太選手と関連してTVでも取り上げられていましたね。
茅田昂選手が「山縣選手が勝てなかった天才」として取り上げられていました。慶應のアンカーを務めているのは、当時1年生の小池祐貴選手です。
TVでの取り上げは慶應に絞っていたのでここまででしたが、早稲田のアンカーも小池選手と同学年の加藤修也選手なんですよね。小池選手相手にこの距離を詰め切ってあと少しで勝てていた局面に持って行けたのは、高校生の時点で45″69で走っていた加藤選手でないとできなかったでしょう。
2023世界陸上ブダペスト 女子 イギリスvsジャマイカvsオランダ
記憶にも新しいレースです。オランダのフェムケ・ボル選手が最後の最後で逆転したレースです。
最後まで乱れないフォームで走り切って逆転、誰もがこのようなパフォーマンスに憧れるでしょう。
ボル選手は大会序盤の男女混合マイルにも出場しているのですが、その時は最後の最後で転倒し優勝を逃してしまっているのです。
これにより怪我などが心配されたボル選手ですが、そんな気配は感じさせず個人の400mHで圧倒的パフォーマンスを見せて優勝します。
疲れすら感じさせないこの走りは必見です。
ボル選手のインスタには彼女の練習の様子がたまに上がっていますが、ハードに行っていそうです。やはり強い選手はするべきことを行っていますね。
今回は上記の5つレースで終わりたいと思います。個人的に面白いと感じたレースはまだまだあると思いますが、陸上を知らない人にも魅力的かと思えるレースをピックアップしてみました。またほかの種目でも語りたいと思います。
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